抗菌薬の臓器移行性

今回は抗菌薬の臓器移行性について参考になったので載せてみました!


1 呼吸器
肺組織への移行はアミノ配糖体系を除いて良好。
細菌性肺炎にはβラクタム系を、非定型肺炎にはレスピラトリーキノロンやケトライド系のケテックを用いる。
喀痰中の移行は血液と気管支間に障壁が存在するため、マクロライド系とフルオロキノロン系以外は極めて不良
2 腎・尿路
腎臓への移行はマクロライド系を除いて極めて良好。ただし前立腺へは移行しにくい。尿路感染症には腎排泄型の薬剤を選択。基礎疾患のない単純性尿路感染症には第3世代のセフェム系かフルオノキノロン系を用いる。
3 肝・胆道
胆汁移行は分子量500以上で蛋白結合率80%以上のセフェム系注射薬が良好な移行を示すが、分子量400前後で蛋白結合率10%以下のカルバペネム系の移行は悪い。アミノ配糖体系の移行も良くないが、重症感染症の場合、βラクタム系との併用で用いられることあり。ミノサイクリンやリファンピシンは腸―肝循環により血中濃度維持時間が長くなる。
4 中枢神経・髄液
中枢神経系には血液―脳関門があり、抗菌薬の髄液移行は極めて不良。脂溶性のリファンピシンやクロラムフェニコールは容易に通過するが、イオン化しているアミノ配糖体は通過できず。セフェム系は第1、第2世代は不良であるが、第3、第4世代の注射薬の移行は良好。ペニシリン系も炎症がある場合は移行する。
5 食細胞
食細胞(好中球、マクロファージ)への移行はマクロライド系が良好。食細胞が感染組織に遊走するので組織内濃度は血中濃度の数十倍まで達する。
15員環のジスロマックは組織内濃度が約7日間持続
6 皮膚組織
皮膚組織への移行はマクロライド系、フルオロキノロン系、クリンダマイシン(ダラシン)が優れ、テトラサイクリン系は中程度、βラクタム系は劣る。
外用薬は表皮の移行は優れているが、脂腺や毛包下部への移行は内服薬が良好。
7 母乳
乳汁への移行は脂溶性、弱塩基性の薬物が移行しやすい。マクロライド系はよく移行し、βラクタム系は移行が悪い。ペニシリン系は血中濃度の1/3程度、テトラサイクリン系は約1倍、マクロライド系は血漿中濃度の数倍。
8 胎盤
βラクタム系、アミノ配糖体系は羊水移行がよい。
胎盤通過性は低分子、高脂溶性、非イオン型が移行しやすく、分子量が500~1000なると通過しにくくなる。